歯医者に行くと嫌でも目に入る歯周病の恐ろしさを謳うポスターの数々。
CMや雑誌で、下がった歯茎の画像や映像を見たことのある人も多いのではないでしょうか。
「まだ30代」とはいえ、「もう30代」でもあるのです。歯周病も他人ごとではありません。
英語では「silent disease(沈黙の病気)」と言われ、症状が進むまで自覚症状がないことも多く、気づいたときには手遅れということも考えられます。
「芸能人は歯が命」というキャッチコピーもあったように、きれいな口元は美人の条件です。
服やアクセサリーで着飾るだけでは本来の美しさは見えません。
白い歯を支える土台となる歯茎は、きちんとお手入れをしてあげなければいつかは歯を支えることができなくなってしまいます。
美しさだけでなく健康にも関わる問題なのです。
歯周病の予防には正しい知識が必要です。
まだまだ間に合う30代のうちに、美しい口元について考えてみませんか。
歯周病とは
歯周病とは、歯周病菌が原因で起こる感染症です。
歯と歯肉の間にある溝(歯肉溝)は、健康な人であれば1~2mm程度の深さです。
ここに細菌がたまってしまうと歯肉が炎症を起こし、腫れたり赤くなったりし、ポケットのようなすき間ができてしまいます。
これがCMなどでよく聞く「歯周ポケット」で、これが3mm以上になると歯周病と診断されます。
8割が歯周病ってホント?
日本人の8割が歯周病とよく言われますが、本当にそんなに多いのでしょうか。
地域歯周疾患指数(CPI: Community Periodontal Index)によって評価されたデータでは、35~44歳の日本人のうち2割に当たる人が歯周ポケットを有しているということです。
45~54歳で3割、55~74歳は5割、75歳以上になると6割と、年齢に応じて歯周ポケットを有する割合は上がっていることが分かります。
「日本人の8割」というのは歯周ポケットのあるなしではなく、歯の状態がすべて健全である人が2割という結果から逆算されたものです。
8割には歯石が少しあるだけの人も含まれていることになりますので、少し大げさとも言えます。
とはいえ30代でも5人に1人が歯周病であるのは確かです。決して低い数字とは言えませんね。
歯周病の自覚症状と高リスク要因
歯周病は自覚症状がないことも多くありますが、歯茎の出欠や腫れが認められた場合は歯周病の可能性があります。
他に、歯茎が下がったり寝起きに口の中がネバネバしていたりするといった症状も見られます。歯茎が下がると歯の間にすき間ができ、歯が長くなったように見えます。
こういった症状が見られる場合は歯周病を疑ってみるとよいですね。
歯周病は加齢とともにリスクが高まります。
喫煙者や妊婦、ブラッシングをあまりしない人もリスクが高いと言われています。
複数当てはまる場合は口の中の様子を意識してみましょう。
歯茎から歯へ 歯周病の進行
歯周ポケットという響きからもあまり怖そうなイメージを受けない歯周病ですが、いったいどのように進行し体に影響していくのでしょうか。
口の中には様々な細菌がいるため、歯磨きなどのケアを怠ると最近はどんどん増えていきます。増えてしまった細菌は、ねばねばしたプラーク(歯垢)となって歯の表面にくっつきます。
このプラークが石灰化して硬くなったものが歯石です。
言い方は悪いかもしれませんが、細菌は集まると膜のようになってくっつくという点では、排水溝やお風呂にこびりついたヌメリと同じようなものです。
この細菌が歯周ポケットに入り込み、どんどん溝を深くしていきます。
溝に入った最近はなかなか自分では取り除けません。
最近は歯茎から歯へ、そして歯を支える骨までもが炎症を起こしてしまいます。
骨は溶け、歯はグラグラし、結果抜け落ちてしまうこともあります。
口臭の原因にもなる歯周病
歯周病は歯肉が赤くなり腫れる以外にも、様々な症状を引き起こします。
代表的なのは口臭です。スメルハラスメントという言葉もできたように、最近では他人の臭いに敏感な人が増えてきています。
歯周病の臭いは主に、最近が作る揮発性硫黄化合物の臭いです。
これはドブのようだと言われるほどの悪臭で、そこに加齢や喫煙などの要因が混ざり合うことで周りを不愉快にさせるようなひどい臭いとなってしまいます。
他に歯周病により歯茎が下がり歯の根元が露出することで、知覚過敏を引き起こすこともあります。
冷たいものが歯にしみてキーンと痛くなり歯磨きも手早く済ませてしまうことで、さらに歯周病が進行してしまうという悪循環に陥ることも少なくありません。
喫煙は「百害あって一利なし」
タバコに含まれるニコチンは、血液の流れを悪くして体の持っている抵抗力を弱めてしまいます。
様々な病気の原因となる喫煙は歯周病にも悪い影響をもたらします。
タバコは口から吸うものですので、口の中は直接影響を受けます。
歯周病は感染症ですから、抵抗力が弱い人ほどかかりやすく進行も速く、さらには再発のリスクも高いのです。
喫煙者はもちろん、非喫煙者でも受動喫煙による影響は大きくあります。
治療や予防を考えるのであれば国をあげた禁煙が必要となってくるかもしれませんね。
歯周病は全身病?糖尿病との意外な関係
歯周病が気になったときは歯科医院(歯科・歯科口腔外科)へ行きます。
しかし歯周病は同じ生活習慣病の一つである糖尿病とも密接な関係があると言われています。
歯周病菌の毒素は腫れた歯肉から血管に侵入し、血液に乗って全身をめぐります。
毒素は血糖値を下げるインスリンの働きを邪魔し、糖尿病の治療の妨げとなります。
裏を返すと歯周病を治療することで、糖尿病の治療に良い影響を与えることができるということです。
血管に入り込んだ歯周病菌の毒素は動脈硬化を悪化させる要因となりえるという研究結果も発表されています。
歯周病による炎症は支給収縮作用のある物質の分泌を促すため、早産につながるとも言われています。
歯周病は口の中だけでなく、全身に関わる深刻な病なのです
歯周病の診断方法
歯周病の診断は、歯茎から歯を支えている骨までの長さを元に行います。
プローブと呼ばれる細長い器具を歯に沿って歯茎の中へ入れていきます。
原始的とも思われる方法なので、診断が人の手に委ねられており、100%正確とは言い切れない部分があります。
歯科医院ではプローブだけでなくレントゲンを併用して歯の骨の位置を確認することで、より正確な診断をしています。
さらにプローブを使ったときの出血の程度も診断の根拠となります。
これらを総合的に見て、歯周病かどうかやその進行度を診断します。
進行度によって治療法は異なります。
歯周病の治し方は4つ
歯周病の治療は歯科医院で行います。
軽度の歯周病の場合、まずはプラークコントロール(歯垢を取り除くこと)からです。
歯石除去(スケーリング)
スケーラーと呼ばれる器具で、表面に付いたプラークや歯石を取り除きます。
スケーラーは先が細く尖っている器具ですが、フック状にカーブしているため、歯茎で隠れている部分もかき落とすことができます。
手動のスケーラーもありますが、超音波の振動でかき落とすものもあります。
スケーリングは定期健診でも行う基本的な治療です。
これでは除去しきれないほどこびりついてしまった歯石にはルートプレーニングを実施します。
SRP(スケーリングルートプレーニング)
歯茎の内部に入り込んだ歯石をかき出すのがスケーリングルートプレーニングです。
スケーリングよりももっと深いところまで器具を入れるため、麻酔をすることが多いです。
麻酔の必要性は意見が分かれています。
痛みがない場合はもちろん必要ありませんが、腫れている歯茎の深いところに器具を入れてガリガリと歯石にアプローチするわけですから、痛みを伴うこともあります。
ここは症状を見て歯科医と相談ということになります。
ルートプレーニングでは歯石の除去と合わせて、歯の表面を滑らかにする作業も行います。
表面がデコボコのままではプラークの膜がまた付きやすくなり、離れた歯肉もくっつきません。
軽度の歯周病であればスケーリングやルートプレーニングとブラッシングの指導で症状は改善されます。
これで改善されないほど症状が進行している場合は、外科的手術が検討されます。
歯周外科手術
歯ブラシが届かないほど歯周ポケットが深くなっている場合は再発の危険が高いため、外科的手術を施すことになります。
腫れてはがれてしまった歯肉を切除する「切除療法」やメスで歯肉を切って深いところの汚れを取り除く「フラップ手術(歯肉剥離掻爬術)」などがあります。
切除手術は効果的に歯周ポケットを治すことができますが、歯茎の一部を切除するため、やはり見た目への悪影響は避けられません。
露出した歯根が知覚過敏を起こすこともあり、現在ではフラップ手術が主流のようです。
フラップ手術は、歯肉を切って前述のスケーリングやルートプレーニングを施した後で歯肉を縫合するというものです。
歯肉が戻るため、切除手術のデメリットが解消されています。
患部が目視できることで、取り残しも防げます。
歯周組織再生療法
歯周外科手術で歯茎を切開したとき、「エドムゲイン(開発歯周組織再生誘導物質)」を歯の表面に塗布することで、歯周組織の再生(修復)を助けることができます。
歯科医院のプロフェッショナルケアで歯周病を予防
歯周病の治療は基本的にプラークや歯石の除去をします。
歯石はプラークが沈着して硬化したものなので、プラークの沈着を防ぐことが歯周病ケアで最も効果的であると言えます。
つまり「治療」は「予防」と併用すべきもので、予防ケアが欠かせないということです。
定期健診でプラーク除去
歯科医院というと虫歯や歯痛で行くところと思われがちですが、定期的に歯や歯茎の状態をチェックしてもらうべきなのです。
歯科医院で定期検診を受け、必要に応じてスケーリングで歯石を除去することで歯周病は防げます。
3DS(デンタルドラッグ・デリバリー・システム)
デンタルドラッグ・デリバリー・システムを直訳すると「歯の薬剤を届けるシステム」です。
その名の通り、マウスピースに注入した薬剤をそのまま歯と歯茎に合わせて細菌を除去します。
治療と予防を同時に行うことができる優れた施術ですが、まだ一部の歯科医院でしか行われていない上、費用も安くはありません。
リスク検査も必要なので、歯科医と相談してみるとよいでしょう。
他にはブラッシングや生活習慣の指導をすることでセルフケアの効果を高めたり、口呼吸をしている場合は耳鼻科の診療を提案したりします。
かみ合わせが悪いとブラッシングやスケーリングもい難しくなってしまうので、長い目で見れば矯正も視野に入ります。
セルフケアで歯周病を予防
歯周病は予防が大切です。
毎日歯科医院へ行くわけにもいきませんので、最も大切な予防法は毎日のセルフケアと言えます。
生活習慣を見直す
歯周病は感染症なので、体の抵抗力が強ければ感染を防げたり進行を遅らせたりすることができます。
他の多くの病気と同じですね。
抵抗力を高めるには、食事や睡眠の習慣を見直すことが効果的です。
食事はバランスよく、3食しっかりと食べます。
糖分はプラークのエサとなるため控えめに。
糖尿病と関係が深いことを考えると、カロリーや塩分にも気を配った「体に良い食事」が歯周病にも良いと考えられます。
睡眠不足は体の抵抗力を下げてしまうので、規則正しい生活で睡眠時間も確保しましょう。
睡眠がきちんととれないとストレスにつながり、ストレスは抵抗力を下げるとともに歯ぎしりとなって歯周組織に刺激を与えることもあります。
喫煙習慣があるのなら、禁煙することで歯周病はもちろん体の様々な器官に良い影響を与えるのは間違いありません。
喫煙はニコチン依存症という病気なので、意志の強さに問題があるわけではありません。
今日から禁煙!ではなく、禁煙外来やガムなどの禁煙グッズを上手に使って、無理せず長期的に禁煙を目指しましょう。
ブラッシングは丁寧に
子供の頃「3分間磨きなさい」と言われてきた人もいるのではないでしょうか。
何分磨けば良いというものではありませんが、ちゃちゃっと終わらせられるものでもないことを考えると、3分は良い目安ですね。
歯周病予防に有効なブラッシングのポイントは、「歯の面に対して45度、歯周ポケットを意識して、1,2本ずつ磨くこと」です。
この3点に気をつけて丁寧に磨いていくと、ブラッシングには数分かかるでしょう。
歯並びが悪い人は、特に歯と歯の境目に毛先を入れるように歯ブラシの向きを変えてブラッシングをします。
多少面倒に思うかもしれませんが、表面だけ磨いても歯周病は防げません。
1日3回が理想ですが、忙しければ朝昼は簡単にしてもせめて夜だけはしっかりと磨きましょう。
毛先の細い歯ブラシを使う
歯周病予防には、歯周ポケットを掃除しやすい先端の細くなった歯ブラシが有効です。
毛の堅さも色々ありますが、健康であれば「普通」を、歯茎が赤く腫れているようであれば「やわらかめ」を選ぶのが良いですね。
プラークや歯石を考えると硬い毛でガシガシと力を入れたいところですが、歯茎や歯肉を傷つけてしまっては良くありません。
柔らかい毛先で時間をかけてしっかり磨きましょう。
ヘッド(毛のあるところ)やグリップ(握るところ)は、自分の口や手に合ったものを選びましょう。
「GC ルシェロ」や「オーラルケア タフト24」、「オーラルケア ライカブル」辺りが人気のある商品ですね。
電動歯ブラシは細かく振動するため、手磨きに比べて短い時間で汚れを落とすことができて便利です。
とはいえ電動だと細かい部分に当てるのが難しい部分もありますので、どちらがいいとは一概には言えません。
何を使うかよりもどう使うかが重要ですね。
便利なケアグッズもたくさん
歯周病への知識と関心の高まりにより、様々なケアグッズが手軽に買えるようになりました。
歯間ブラシやフロスを使うことで、歯ブラシの入りづらい歯と歯の間を掃除することができます。
小さいので持ち運びにも便利です。
仕事の休憩時に歯磨きをするのは時間もかかって難しい人も、歯間ブラシやフロスだけならササッとできるのではないでしょうか。
もちろん歯ブラシの後に歯のすき間もケアできれば完璧ですね。
フロスは使い捨てですが、歯間ブラシは痛まなければ歯ブラシと同様に繰り返し使えます。
ブラッシングだけでなく自分に合ったケアをプラスすることで、さらに歯周病予防が期待できます。
オススメ歯磨き粉Best4
歯磨き粉も色々ありますが、歯周病に特化した歯磨き粉を選ぶことで予防が期待できます。
ドラッグストアにもネットにも様々な商品が並んでいて、どう選べばよいか分からない!という声が聞こえてきそうですので、今回はランキング形式でご紹介しようと思います。
1位 プロボデンタルEX
日本初のプロポリス配合歯磨き粉で、歯科医との共同開発というのに惹かれました。
発売から20年というのも安心感がありますね。
ただ私が1位に選んだのは、やはり強力な殺菌力のあるプロポリスを使っているというのが大きな理由です。
風邪や各種炎症にも効果のあるプロポリスが配合されているということで、効果のあるメカニズムが分かりやすいのが良いと思いました。
緑色のゲルも殺菌作用を表しているようで清潔感があります。
80gで1500円と、専門的なケアをする歯磨き粉にしては手を出しやすい価格なのも嬉しいですね。
2位 トゥースMDホワイトEX
女性が歯周病を治したいのは、健康や将来の歯というより美容のためという部分も大きいかと思います。
その点からみると、歯を白くしてくれる効果のあるトゥースMDがおススメです。
もちろん美白だけではなく、歯周病の予防効果もバッチリです。
余計な発泡剤を使用していないため、泡立ちはよくありません。
泡の多い歯磨き粉に慣れていると違和感を覚えるかもしれませんが、泡があることで何もしなくても磨いた気になってしまうため、泡は良いものとは言えないのです。
泡がない分しっかり一本ずつ磨くようになるので、歯周病を含め口の中をきれいに保つことが期待できます。
25mlで3500円と少し高価なため2位としましたが、値段に見合う本格的なケアができます。
3位 OraPearl(オーラパール)
岡江久美子さんのCMで有名なジキニンはなじみのある人も多いハズ。
そのジキニンの製薬会社である全薬工業が開発したオーラパールは、腫れ・赤みを鎮める塩化リゾチームや抗炎症作用のあるグリチルリチン酸などを配合しており、歯周病はもちろん口臭や口のネバつきにもアプローチしてくれます。
きらっと光るパッケージも、歯がきれいになりそうでいいですね。
4位 ブリアン
ブリアンは子供のことを考え抜いた歯磨き粉です。
殺菌剤や発泡剤はもちろん、添加物・保存料・界面活性剤……子供の体に良くないものは徹底的に取り除き、優しい成分のみで作られています。
ブリアンに含まれる善玉菌は歯垢を除去してくれるので、子供のうちから歯周病を予防することができます。
子供のいる家庭にとっては1位にしても良いくらいの商品ですね。
まとめ
歯周病にはセルフケアが何よりも大切だということがお分かりいただけたかと思います。
- 生活習慣
- ブラッシング
- 歯ブラシ
- ケアグッズ
- 歯磨き粉
この5つを見直すことで、きれいな歯茎を取り戻し美しい口元が期待できます。
かかりつけの歯科医院を作って定期的にケアしてもらうことで、さらに効果が上がります。
美しい口元で作る笑顔は最高に素敵です。
健康のためにも美容のためにも、今日からセルフケアを始めてみてくださいね。